知っていましたか?胃がんは予防できる「がん」です

胃がんとピロリ菌の関係とは?

かつてはがんの罹患数および死亡数ともに第1位だった胃がんは、近年罹患率・死亡率ともに減少しています。その理由として内視鏡による早期発見・治療が進んだこと、胃がんの原因として明らかなヘリコバクター・ピロリ菌の検査・除菌が積極的に行われたことが大きな要因と考えられています。

ピロリ菌の感染経路は、ピロリ菌が混入した生活用水(井戸水など)を飲んだ、あるいは感染している親から子への食べ物の口移しなどが考えられていますが、明確な感染経路は未だ不明です。感染の多くは免疫力が完成していない幼少期(5歳以下)と言われています。日本におけるピロリ菌の感染率は、衛生環境の向上に伴い若い世代では低くなっています。

ピロリ菌は胃の粘膜に感染し炎症を引き起こします。長期間の感染により胃粘膜に広範囲の慢性胃炎(ピロリ感染胃炎)を発症します。慢性胃炎の持続により胃粘膜は萎縮し(萎縮性胃炎)、胃がんの発生母地となることが知られています。そして日本人の胃がんの98%はピロリ菌感染によるものです。

ピロリ菌の検査と除菌治療

胃がんを発症させないためには、まず胃がんの原因であるピロリ菌に感染しているかどうかを検査し、感染している場合は早急に除菌治療することが重要です。当院ではピロリ菌の抗体検査(血液で調べる)や内視鏡検査(胃カメラ)での生検によってピロリ菌のチェックを実施しております。50代以上の感染リスクが高い世代では、胃がんの有無も合わせて評価できる内視鏡検査を強くお勧めします。

もしピロリ菌検査で陽性と診断されたら、かならず除菌をしましょう。除菌治療は飲み薬で行います(2種類の抗菌剤と胃酸を抑える薬を1日2回、1週間服用します)。その後4週間以降に判定検査を行い、ピロリ菌が存在していないことを確認できれば、除菌完了です。それでもピロリ菌が存在していた場合は、再び別な組み合わせの薬を服用します。除菌は2回目までは保険診療で受けられます。薬の副作用として一時的な皮膚発疹、軟便や味覚異常が出る方がいます。また、除菌薬にはペニシリン系の抗菌薬が含まれていますのでペニシリンアレルギーの方はスタッフへお伝えください。

ピロリ菌除菌後も油断大敵

除菌によって胃がんのリスクは下がりますが、リスクがゼロになるわけではないことに注意が必要です。除菌するまでの間に蓄積された胃のダメージ(胃粘膜の萎縮)は“リセット”されず、リスクとして残ります。ピロリ菌に感染していた年数が長いほど胃がんのリスクは大きいことが知られており、除菌後も定期的な内視鏡検査で胃の状態を確認することが大切です。追跡調査の結果、除菌後の発症は概ね10年以内であるため、例えば50歳で除菌した場合、少なくとも60歳までの10年間は胃がん検診で内視鏡検査を受けるようにしましょう。

当院では「つらくない経鼻内視鏡」「鎮静剤の使用可能」「早朝内視鏡検査」を行っております。おひとりおひとりの状態やご希望に合わせて、みなさまが安心して定期的な内視鏡検査を受けられる体制を整えております。他院で除菌を行った方でもかまいませんので、お気軽にご相談ください。(内視鏡検査の予約は診察時に行っております。まずは診察の予約をお願いします。)